グラフィックボードとは何かについて解説します。グラボやビデオカードと呼ばれることもあります。主な役割は画像や映像の出力です。実はほとんどのCPUにGPUが搭載されていてグラフィックボードがなくてもモニター出力など最低限の機能は果たせます。しかしながら、3Dゲームをプレイしたり画像生成AIに活用するのには性能が物足りません。グラフィックスに掛かる負荷は大きくなり、外付けグラフィックボードの重要度が増しています。
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画像・映像処理を担当
グラフィックボードは、画像処理及び映像処理を得意とするPCパーツです。身近なところだと3Dゲーム・3D CAD・画像生成AIなどで活躍します。グラフィックボード内部にGPU(Graphics Processing Unite)が搭載されていて3Dグラフィックス処理を行います。GPUはCPUと同様にプロセッサーですが、特性及び役割が異なります。GPUは、搭載しているコア数が多く3Dゲーム出力など並列的な計算処理を高速に行えます。GPGPU(Genereal Purpose Computings on GPU:GPUの汎用計算)も普及して来ていて画像処理演算以外にも利用可能です。具体的には動画のエンコードなどのアプリケーションで活用されます。
グラフィックボードの構成要素
グラフィックボードの構成要素をまとめました。グラフィックボードとGPUは同じものとして扱われることもありますが、厳密に言えば両者は異なるものです。GPUはあくまでもチップそのものを表します。VRAM・インターフェース・ヒートシンク・補助電源・出力端子・BIOSなどを含めてグラフィックボードを構成しています。
- GPU
Graphics Processing Uniteの略でグラフィックボードの根幹部分です。無数のトランジスタが搭載されていて画像処理全般を担います。
- VRAM
画像データを一時保存するGPU用のメモリです。システムメモリと分けることで効率的にデータのやり取りが行えます。
- インターフェース
マザーボードと接続するためのインターフェース(PCI-Express)が設けられています。
- ヒートシンク
使用時の熱を放出するためにヒートシンクがあります。
- ファン
効率的に外に熱を排出するためのファンが搭載されています。エントリークラスのモデルだとファンが搭載されていないファンレスモデルもあります。
- 補助電源
電源を供給するための電源コネクタが搭載されています。16-pin、12-pin、8-pin、6-pinなどモデルごとに設定されています。2×8-pinなど2つのコネクタが必要です。
- 出力端子
モニター出力用の端子が設けられています。最近はDisplayPortとHDMIが主流です。古い端子だとDVIやVGAがあります。
GPUとCPUの違い
GPU | CPU | |
---|---|---|
役割 | 画像描写に特化 | システム全体の処理 |
コア数 | 1,000-16,000 | 2-16 |
計算処理 | 並列 | 直列 |
処理速度 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
GPUとCPUはどちらもプロセッサーですが役割が異なります。GPUは、画像処理に特化しています。一方で、CPUはシステム全体の処理を担当します。画像処理以外全般と言っても良いでしょう。GPUはコア数が1,000から16,000と多くCPUとは規模が異なります。並列処理が得意で大量のデータを効率的に処理できます。処理速度も圧倒的です。CPUは直線的で複雑な処理が得意です。
グラフィックボードの活躍の場
https://jp.morgenrot.cloud/blog/parallel-processing-of-gpu/グラフィックボードが活かせる用途は意外と多い。
3Dゲーム
3Dゲームはもっともオーソドックスなグラフィックボードの活用できる用途です。グラフィックボードがないとゲームを起動すること自体できないこともあります。CPU内蔵グラフィックスでは力不足です。最近は美しいグラフィックスをウリにしたタイトルも増えて来ました。新しい技術であるるレイトレーシングによってよりリアルなゲーム描写が実現できます。その代償として負荷が上がるため高性能グラフィックボードが必須です。
動画編集
動画編集作業においてもグラフィックボードが活躍します。基本的にはCPUが処理を行いますが、Premire ProやDaVinci ResolveなどGPGPUを活かせる作業ではより高速での処理が可能となります。グラフィックボードを搭載することでレンダリング・エンコード・プレビューなどの処理が速くなります。お仕事で動画編集を行なっているならグラフィックボード搭載は必須と言えるでしょう。
画像生成AI
2023年以降注目度が増している画像生成AIにおいてもグラフィックボードが有効です。使用ユーザーの多いStable Diffusionでも高性能なグラフィックボードを搭載している方が明らかにパフォーマンスが高くなります。GPUメモリ容量が多いモデルを選ぶ方が良いでしょう。AI生成を目的とするならGeForce RTX 2060 SUPER以上、できればGeForce RTX 3060以上がおすすめです。
3D CAD
3D CAD(Computer Aided Design)は3次元のオブジェクトやモデルを設計するためのソフトウェアです。直訳するとコンピューター支援設計となります。製造業のプロダクト設計や建築業の建築物設計向けです。3Dグラフィックスを取り扱うことになりますので、グラフィックボードの出番です。
機械学習・ディープラーニング
機械学習もグラフィックボードの活躍の場として注目されています。機械学習とはデータを分析する方法の一つです。機械(コンピューター)が自動で学習を行い、大量のデータからルールや法則性を見つけ出しそれらを活用した予測・判断を行うことが可能となります。人間が行うと何十時間・何百時間と掛かる作業でもコンピューターを活用することでより迅速に処理を行えます。ディープラーニングは機械学習の中に含まれていてカテゴリーとしては「教師あり学習」に分類されます。つまり、過去の入力データと出力データ(教師)を学習して、入力データから出力データを推計するものです。
マイニング
一時はマイニングが流行しました。マイニングとは、ビットコインなどの仮想通貨の取引記録をブロッックチェーンに保存する作業を行うことです。取引を成立させることでその報酬として仮想通貨を得ることです。仮想通貨は円やドルなどの法定通貨と異なり特定の組織が管理しているわけではないので、ブロックチェーン上で管理する必要があります。このマイニングにおいてはGPGPUが威力を発揮します。並列処理が高速でCPUと比べても優位性があります。
グラフィックボードの種類
グラフィックボードの種類について、メーカー・用途・デバイスごとに詳しく見ていきましょう。あなたの好みや目的に合わせて選択する必要があります。
二大メーカー+Intel
グラフィックボードのメーカーについて見ていきます。二大メーカーはNVIDIAとAMDです。IntelはCPUメーカーとしては歴史が長いですが、グラフィックボードメーカーとしては後発です。2022年3月にArcブランドを投入しています。まだまだドライバーなどが不安定なときがあるので、基本的にはNVIDIAかAMDのいずれかのモデルから選択すると良いと思います。
NVIDIAのGeForceブランドはモノシリックダイを採用したグラフィックボードです。プロセスは5nmです。Steamでのシェアが78.0%と高くなっています。迷ったらGeForce製モデルを選択すると良いでしょう。価格帯も幅広く、特にフラグシップモデルのGeForce RTX 4090は圧倒的な性能を有しています。総合性能が高くゲーム以外の用途にも対応しやすいです。省電力性も高く扱いやすいと言えるでしょう。
一方で、AMDのRadeonシリーズは上位モデルで2つのダイを組み合わせたチップレット技術を採用しています。Steamでのシェアは14.64%とNVIDIAに大きく水を開けられています。価格帯的にはGeForceより一段階低いです。フラグシップモデルのRadeon RX 7900 XTXでもGeForce RTX 4090と比べて大きく劣ります。また、レイトーシングや画像生成AIではワンランク以上落ちます。ラスタライズ性能だけを見ればコストパフォーマンスは優秀です。
ゲーム向けモデルとプロ向けモデル
目的によって選ぶべきグラフィックボードが変わります。ゲームなど一般消費者向けのモデルはGeForceブランドです。APIはDirectXです。一方で、NVIDIAはクリエイターなどプロフェッショナルをターゲットにしたブランドとなります。数世代前まではQuadroという名称でした。もしかしたらそちらの方を知っているという方も多いかもしれません。主な用途は3D CADや動画編集などとなります。発色についてはどちらもRGB各色10bit 10億6433万色です。かつてGeForceブランドはRGB各色8bit、1677万色と表現できるカラーが控えめでした。その後2019年以降Pascal世代以降のモデルについては10bitに対応となっています。デスクとラップトップ
上記テーブルはデスクトップ向けグラフィックボードとラップトップ向けグラフィックボードのスペックをまとめたものです。ラップトップ向けのグラフィックボードはノートパソコンに収まるように本体が小さくなっています。ファンもなく冷却は本体の冷却性能に依存します。通常グラフィックボードと言えばデスクトップ向けモデルを意味します。ラップトップ向けモデルはTDPを抑えるためにスペックが低くなっています。GeForce RTX 4090 Laptopのスペックはデスクトップ向けのGeForce RTX 4080に近いです。ただし、クロック周波数が抑えられていてかつGPUメモリ周りも弱体化されていて性能差は大きいです。GeForce RTX 4090 Laptopの性能はワンランク下のGeForce RTX 4070 Ti SUPER相当に留まります。ラップトップ向けモデルはベンダー側でTDPを設定できそれによってクロック周波数が変わります。当然TDPが高い方が性能が高いです。つまり、同じGeForce RTX 4090 Laptopでもモデルによって性能が異なるということです。型番だけに惑わされないようにしましょう。
グラフィックボードのスペックを解説
グラフィックボードの特徴を知る上でスペックを理解しておくことは重要です。他のグラフィックボードとの比較すべきポイントも見えてくると思います。NVIDIAのGeForce RTX 4070 SUPERとAMDのRadeon RX 7900 GREのスペックをみながら解説していきます。
アーキテクチャ/GPU
アーキテクチャ及びCPUを見れば世代がわかります。NVIDIAの最新アーキテクチャはAda Lovelaceで、AMDの最新アーキテクチャはRDNA 3.0となります。発売時期と照らし合わせると世代はイメージしやすいでしょう。GPUは搭載しているチップが判断できましう。数値が少ない方がダイサイズが大きく、よりハイパフォーマンスなGPUになります。
シェーダーコア
GPUユニットのコア数を表しています。数千個のコアを持っているのが一般的です。CPUと比べるとコアの数が多くそれがGPUの特徴となっています。同じメーカー・同じ世代であればより多くのシェーダーコアを搭載している方がより高い処理性能を持っていると判断できます。メーカーや世代が変わると単純に数値で比較することは難しいです。それでもコアが多い方がより高性能である可能性が高いです。
クロック周波数
定格クロックであるベースクロックとオーバークロック周波数であるブーストクロックも性能を把握するための指標となります。1秒間当たりに処理できる回数を表しています。例えば、2GHz(2000MHz)だと1秒間で20億回処理できるということです。こちらも同じメーカー・世代のグラフィックボード同士の比較でのみ純粋な比較が行えます。ベンダーが販売するモデルの中にはこの規定のブーストクロックを超えたオーバークロックモデルも存在しています。標準モデルよりも少しだけ高い性能が期待できますが、上位モデルに追いつくほどではありません。
GPUメモリ(VRAM)
GPUメモリもグラフィックボードにおいて重要な役割を果たします。システムメモリと役割は似ていますが、映像データなどグラフィックスに特化したメモリと考えるとわかりやすいです。GPUが必要なデータをGPUメモリから読み込み、演算を行います。GPUメモリ容量が多いほどより効率的に処理ができます。4K環境など高解像度になるとGPUメモリに掛かる負担も大きくなります。ただし、基本的にはGPUメモリ容量が多いモデルほど高性能になるのでGPUメモリ容量を基準にグラフィックボードを選ぶことは一般的ではありません。もちろん、GeForce RTX 3060のように上位モデルよりも大容量のGPUメモリを搭載していたり、同じGeForce RTX 4060 TiでもGPUメモリ容量の異なる派生モデルがあったりと例外もあります。
メモリクロック・メモリバス・メモリバス帯域幅などの数値も重要になります。メモリクロックはGPUメモリ自体のクロック周波数です。数値が高い方がより高速です。メモリバスは一度に送ることができるデータ量を表しています。メモリバス帯域幅は、GPUとメモリ間のデータ転送速度を示しています。メモリ帯域幅が速いほどGPUの演算処理が効率的になります。
L1/L2/L3キャッシュ
キャッシュはGPUとGPUメモリの仲介役です。キャッシュを活用することでより素早く必要なデータを取り出すことができます。数値が少ないキャッシュの方がGPUに近くそして容量は小さくなります。GPUはL1キャッシュ→L2キャッシュ→L3キャッシュ→GPUメモリと順にデータを探します。キャッシュにデータがあれば処理が高速になるということです。
消費電力(TDP/TBP/TGP)
TDP・TBP・TGPはそのグラフィックボードの消費電力を知る上で参考になります。メーカーによってTDPやTBPなど呼び名が異なっています。消費電力に合わせて電源ユニットを選択する必要があります。メーカーによって推奨電源が指定されていることもあります。また、エアフローを考えたPCケースの選択も重要です。例えば、ハイエンドのグラフィックボードを選択するなら本体内部のスペースが大きく、エアフローの確保がしやすいミドルタワーやフルタワーケースが好ましいです。