Core i7-8700の性能レビューを実施しました。様々なベンチマークソフトを活用してそのパフォーマンスを見ていきましょう。ゲーミングCPUとして人気の高かったCore i7-7700の後継モデルとして登場しました。4コア8スレッドから6コア12スレッドと物理コアが増えて、どの程度性能が向上しているのかは気になるところでしょう。Windows 11をサポートしていることから今後中古ゲーミングPCでの主流になるのではないかと考えています。単体の中古価格は11,980円~となっています。
Core i7-8700のスペック
Core i7-8700は、Coffee Lake世代のモデルで2017年10月に発売されました。Kaby Lakeのリフレッシュモデルでプロセスが14nm+から14nm++となっています。Core i7-8700のダイサイズは154m㎡です。Core i7-7700と比べてCPUコアが2コア増えて6コアとなりました。ハイパースレッディングに対応していますので、スレッド数は12です。Core i7-7700よりも定格クロックが0.4GHz低いですが、最大クロックは0.4GHz高いです。Core i7-8700は倍率ロックモデルでOC(オーバークロック)には対応していません。
L3キャッシュ容量も50%増えて12MBとなります。対応メモリはDDR4-2666とより高クロックなメモリをサポートしています。内蔵GPUもHD 630からUHD 630へと強化されました。グラフィックス最大動的周波数は0.05GHz高く1.20GHzです。PCI-ExpressはGen 3, 16 Lanesが維持されています。ソケットはLGA1151 v2です。Core i7-7700のLGA1151と型番は似ていますが、互換性がない点は注意してください。Core i7-8700はCPUクーラー同梱です。TDPは65Wと抑えられています。MSRPは$303のままです。中古価格は11,980円~とCore i7-7700よりも2,000円高いです。
上位モデルであるCore i7-8700Kのスペックも簡単に見ておきましょう。CPUコアやスレッドは同じです。クロック周波数がより高くなっています。Core i7-8700よりも定格クロックが0.3GHz高く、最大クロックも0.1GHz高いです。OCができるのも特徴です。L3キャッシュ・対応メモリ・内蔵GPU・PCI-Express・対応ソケットに違いはありません。Core i7-8700Kはクロック周波数が高いこともあってTDPが95Wと高くなっています。MSRPは$359と$50高いです。中古価格では+10,000円です。
Core i7-8700の写真
CPU表面にはプロセッサーナンバー・スペックコード・バッチナンバーが記載されています。バッチナンバーを調べれば本物かどうか判断できる仕組みです。
サイド部分の画像です。
ソケットは「LGA1151 v2」です。Intel第7世代のLGA1151との互換性はありません。
Core i7-8700に関する考察
物理コアが増えて大幅にパフォーマンスアップ
Core i7-8700は物理コアが増えたおかげもあって従来モデルのCore i7-7700から大幅にパフォーマンスが向上しています。性能差は48%と1世代の伸びとしては過去に例がないぐらいです。Core i7-7700Kと比べても34%程度性能が高いです。競合のRyzen 7 1700と比べると11%程度低くなっています。8コア16スレッドのCPUに勝てないのは仕方がないですね。次世代のRyzen 7 2700になるとさらに性能が高くなります。
もっともCore i7-8700のリリース自体もRyzen 7 1700の存在があったはずです。Core i7-7700は4コア8スレッド2017年1月に発売されました。2017年3月にRyzen 7 1700が登場したことでIntelも焦ったのでしょう。Core i7-7700の発売からわずか9ヶ月後にCore i7-8700をリリースしました。それも物理コアをしっかりと増やしてきました。競合の存在はユーザーにとっても大きなメリットがありますね。
なお、純粋なCPU性能では第1世代Ryzenシリーズに完敗のCore i7-8700ですが、ゲーム性能ではRyzen 7 1700を上回ります。それどころか上位モデルのRyzen 7 1800Xにも圧勝です。シングルコア性能の低さが原因だと思います。コアを増やしてマルチコア性能自体は高いですが、まだまだ発展途上でゲーム性能の伸びはいまいちです。総合的に見ればCore i7-8700は選びやすいCPUといえます。
社外品クーラーへの変更で性能の底上げができる
Cinebench R23実行中におけるCore i7-8700の消費電力は124Wです。従来モデルのCore i7-7700よりも8%程度消費電力が上がりました。物理コアが増えて性能が50%近く向上していることを考えれば悪くありません。ワットパフォーマンスは良好です。この世代のモデルは発熱量でパフォーマンスが抑えられる傾向にあります。今回はリテールクーラーでの検証ですので、社外品の高性能クーラーで計測すれば結果は変わるでしょう。より高いパフォーマンスを得られる可能性もあります。
中古ゲーミングPCでの人気が高まる予感
Core i7-8700は、近い将来中古ゲーミングPCで人気のCPUになるはずです。Windows 10のサポートが2025年10月に切れますので、Windows 11をサポートしているIntel第8世代以降のCPUへの需要が高まるでしょう。そうなればコストパフォーマンスの高いCore i7-8700に注目が集まるのは必然です。よりコストが抑えられる下位モデルのCore i5-8400も魅力的です。6コア6スレッドとスペックは劣りますが、最低限のゲーム性能を有しています。
中古ゲーミングPCの相場的にはCore i7-7700搭載モデルに+5,000円でCore i5-8400/Ryzen 5 2600搭載モデルに、+10,000円でCore i7-8700といったところです。モデルによって多少前後します。注意点としてCoffee Lake世代のチップセット(LGA1151 v2)は、Kaby Lake世代のチップセット(LGA1151)との互換性がないので、Core i7-7700からCore i7-8700へのアップグレードをする際にはマザーボードの交換が必要になる点です。
Core i7-8700のベンチマーク検証【一般】
Cinebench R23
Core i7-8700のマルチコアは7,875で、シングルコアは1,204です。従来モデルのCore i7-7700よりもマルチコアが45%高く、シングルコアも10%弱高いです。次世代のCore i7-9700が8コア8スレッドとハイパースレッディング非対応となったこともあり性能の伸びはそれほど大きくありません。
Cinebench 2024
最新のCinebenchでのパフォーマンスも見ていきましょう。マルチコアは417で、シングルコアは70です。次世代のCore i7-9700との差はマルチコアで2%弱、シングルコアで1%とそれほど大きくありません。一方で、Core i5-10400はマルチコアでCore i7-8700を5%程度上回っています。
ワード(PCMARK10)
ここからはPCMARK10での各種ベンチマークを見ていきます。ワードはシングルコア性能が重視されるアプリケーションです。Core i7-7700よりも4%程度スコアが高くなっています。Core i7-9700との性能差は2%程度となります。
スプレッドシート(PCMARK10)
エクセルを想定したベンチマークです。Core i7-8700のスコアは9,265とまずまず高いです。次世代のCore i7-9700と変わらないスコアとなります。旧世代のCore i7-7700よりも10%近くもスコアが向上しました。シングルコア性能の向上がプラスになったのだと思います。
画像編集(PCMARK10)
画像編集におけるパフォーマンスを見ていきます。Core i7-8700のスコアは8,954で、Core i7-9700やCore i5-10400と同程度です。Core i7-7700と比べると72%も高くなっています。
動画編集(PCMARK10)
動画編集でのスコアは5,636です。Core i7-9700Kを上回っているのは驚きです。この性能帯のモデルであればそこまで差が出ないということでしょう。現行のCore i5-14400やRyzen 7 5700Xは頭一つ抜き出ています。
Zip
Zipファイルの解凍及び圧縮速度をまとめました。解凍速度はCore i7-7700よりも2.7倍も速いです。圧縮速度も63%速くなっています。コア・スレッド数が物を言うアプリケーションといえます。次世代のCore i7-9700はハイパースレッディングに対応していないこともあってかCore i7-8700とそこまでスコアが変わりません。
Core i7-8700のベンチマーク検証【ゲーム】
Fire Strike
Fire Strikeのスコアは14,774となります。CPUによる差はありません。Core i7-9700搭載モデルやCore i7-10700搭載モデルと同等のスコアとなっています。
Time Spy
Time Spyでも同様です。Core i7-8700搭載モデルのスコアは6,280で、Core i7-9700やCore i7-10700搭載モデルとの差は誤差の範囲と言えそうです。
FF14 黄金のレガシー
出典:https://jp.finalfantasyxiv.com/dawntrail/
FF14でのパフォーマンスを計測しました。FULL HDでは最高品質でも73.0fpsと十分な数値が出ています。WQHD環境以上でのゲームプレイはやや厳しいです。Core i5-10400F搭載モデルとの差を見る限り、ゲーム性能ではCore i5-10400Fの方が高いといえそうです。FULL HDでは4%の差しかありませんが、WQHD・4K環境では30%程度の差があります。
Cyberpunk 2077
Cyberpunk 2077でのベンチマークツールでフレームレートを計測しました。i7-8700×GTX 1660 Tiの組み合わせで平均fpsは79.9fpsとなります。低設定にすれば問題なくゲームを楽しめます。AMDのアップスケーリング技術であるFSRを有効化すれば50%以上もフレームレートが向上します。最小fpsも大きく伸びます。Ryzen 5 4500搭載モデルと比べてもFSRでの伸びが大きいことがわかります。参考までに高設定だと平均fpsは46.3fpsまで落ち込みます。